函館地方裁判所 昭和43年(わ)49号 判決 1968年12月02日
本籍
函館市若松町二二番地
住居
同所三六番一五号
不動産買賃及び株式売買業
砂子義夫
明治三三年七月二三日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官宮永広出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を罰金一〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
(罪となる事実)
被告人は不動産賃貸業及び株式売買業を営んでいる者であるが、不動産賃貸料収入の一部及び謝礼金、不動産売却等の収入を除外し、或いは不動産賃貸に伴う経費の架空、水増し計上をして所得を秘匿する方法により所得税を免れようと企て、昭和四一年三月一五日所轄函館税務署長に対し、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの年度における実際所得金額は八、三八二、八八六円であり、これに対する所得税額は三、一五四、五〇〇円であるのに、同年度の所得金額は三、九二五、〇一一円であり、これに対する所得税額は一、〇四六、二〇〇円である旨情を知らない秋山金司をして過少に記載させた所得税確定申告書を提出し、もつて不正の手段により右正当税額との差額二、一〇八、三〇〇円をほ脱したものである。
(証拠の標目)
一、被告人の当公廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書九通
一、砂子平二(二通)、曽根覚、藤浪健、加藤貞子(昭和四三年三月五日付)、秋山金司(三通)、守屋ハナ(二通)の検察官に対する各供述調書
一、収税官吏の藤浪松子、佐々木キミ、赤井カツエ、森田フジエ、砂子初幸、渡辺茂雄(昭和四二年五月二六日付)青井清一(昭和四二年七月一〇日付)らに対する各質問てん末書
一、竹下順子、会津勇太郎、北野武雄、稲垣友宏、株式会社二菱商会代表取締役斉藤正雄各作成の答申書
一、大蔵事務官外館健一作成の報告書三通
一、野村証券株式会社函館支店、山一証券株式会社函館支店各支店長作成および函館証券株式会社経理課長作成の各答申書
一、大蔵事務官五十嵐廉平外三名、同橋本栄一外二名、同五十嵐廉平外一名、同石垣信吉外一名、同堀川浩(三通)各作成の調査事績報告書
一、山田廉一作成の市道民税及び固定資産税、都市計画税の課税状況等について(回答)と題する書面
一、押収してある不動産入金帳、不動産集金帳、同上不動産入金帳、不動産集金帳各一冊(順次昭和四三年押第三五号の符号一乃至五)、手帳四冊(同号の符号六の一乃至六の四)領収証等書面二一枚一袋(同号の符号七)不動産権利証(封筒入)二六通(同号の符号八の一乃至八の二六)領収書(封筒入)一九通(同号の符号九の一乃至九の一九)税金領収書(封筒入)四通(同号の符号一〇の一乃至一〇の四)賃貸先別収入帳四冊(同号の符号一一の一乃至一一の四)決算関係書類綴三冊(同号の符号一二の一乃至一二の三)青色申告者書類綴一綴(同号の符号一五)譲渡所得調査書一冊(同号の一六)不動産集金帳三冊(同号の符号一八、一九、二〇)売買不動産メモ(同号の符号二一)登記済権利証一通(同号の符号二二)地代台帳一冊(同号の符号二四)貨地明細表一冊(同号の符号二五)不動産貸先帳一冊(同号の符号二六)
なお公訴事実中、昭和四〇年における被告人の実際所得金額八、四一〇、四二八円これに対する所得税額三、一六八、五〇〇円とあつたのを、前記のとおり認定したのは、
1 函館市本町岩館厳の資料年額を八、四〇〇円と、
2 同市新川町浜繁の賃料年額を五、一六〇円と、(昭和四三年押第三五号の符号一八の不動産集金帳および同号の符号二六の不動産賃先帳による)
3 同市高砂町赤井カツエの賃料年額を九、六〇〇円と、(収税官吏の同人に対する質問てんまつ書による)
4 同市松風町一四〇一五番沢田ツヤの賃料年額を二九、六七六円と(前同号の符号2の不動産集金帳による)それぞれ認定した結果、不動産賃貸料収入が合計二七、五四二円(右4について平二と共有につき半額のみ算入)減となつたためである。
(法令の適用)
被告人の判示所為は所得税法二三八条一項前段に該当するところ、所定刑中罰金刑を選択し、その所定金額の範囲内で被告人を罰金一〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、刑法一八条により金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 近藤道夫)